良書読書会のしおり

なんばまちライブラリーが惜しまれて閉館したため、新大阪で開催しています。初参加の方大歓迎。現在は季節ごとに開催。

批評

キリキリとゾワゾワ—吉行淳之介『闇のなかの祝祭』(1961)

私が生まれて初めて吉行淳之介に触れたのは『樹に千びきの毛蟲』だった。といっても、この題名がつけられた彼のエッセイ集の中身は未だに読んだことはない。幼少の頃、実家の本棚に並んでいた数ある背表紙の中で、この題名がいつも目に留まり続けたのを覚え…

21世紀名作映画この10本①:『マッドマックス 怒りのデス・ロード』とつなぐ力

二人のマックス 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)は独白から始まる。"Once I was a cop." その第一声を聞いた瞬間、観客の脳裏には『マッドマックス』(1979)でのメル・ギブソンの勇姿がよみがえるだろう。車に押し潰される娘のフラッシュバック…

網羅への諦念が漂う博物誌 — 寺山修司『幻想図書館』(1982)

今期放送中の、幾原邦彦監督のアニメ『さらざんまい』を観ていて、「これはまるで寺山修司じゃないか!」と思ったのをきっかけに、改めて寺山修司の諸作品に興味を持ち、少しずつ入手を試み始めている。 その中の一冊、『幻想図書館』は1982年に出版されたも…

名作日本文学読みなおし③ 太宰治「走れメロス」

「走れメロス」は太宰治の代表作として多くの教科書に収録され少年少女の心に友情の美しさを焼き付ける一方で、太宰作品全般から見ると「太宰らしさが皆無」「なんかいつものウジウジした太宰と違う」「明るすぎる」と継子扱いされてきた、奇妙な矛盾をはら…

名作日本文学読みなおし② 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読むと、そのたびに不思議な思いにとらわれます。本を読まない小学生でも名前は知っている古典なのに、読んでいる途中も読み終わった後も浮遊感が続き、決して作品世界に慣れるということがありません。「ジョバンニ」や「カム…

これは作者の罠なのか — 安部公房『笑う月』(1975)

安部公房は間違いなく戦後日本を代表する作家の一人だ。「ノーベル文学賞受賞寸前だった」というような世俗的なニュースもたまに流れてきたりするので、名前だけでも知っている人も多いだろう。あるいは、教科書で短編『赤い繭』(『壁』より)やエッセイ『…

名作日本文学読みなおし① 志賀直哉「城の崎にて」

志賀直哉は、「小説の神様」とまで謳われた近代日本文学の巨人です。中でも「城の崎にて」(1917)は国語の教科書にも採録され、最も知名度が高い短編でしょう。しかし先入観を抜きにして読んでみると、これほど異様な短編も少ないように思える…。いったいど…

はじめに

はじめまして、良書読書会です。私たちの読書会で取り上げている「良書」とは、「誰が読んでもおもしろい小説」のことです。 このブログでは、良書読書会の告知や活動報告と、メンバーが好きなもの・良いと思うものについて書いた文章を載せています。「好き…