良書読書会のしおり

なんばまちライブラリーが惜しまれて閉館したため、新大阪で開催しています。初参加の方大歓迎。現在は季節ごとに開催。

『冷静と情熱のあいだ』会レポート & 第32回課題書は『君の膵臓を~』に決定!

 昨日、2024年5月25日土曜日は、『冷静と情熱のあいだ』ヒロイン・あおいの54歳の誕生日! これを祝い、5人+幼児1人の参加者がオオサカのドゥオモに集いました。急な階段を登ると、幼児も動き回れる広い場所があり、皆であっという間の3時間超を過ごしました。以下はそのレポートです。

 

 最初に、「あおいは54歳になった今日も、フィレンツェのドゥオモで順正を待っている」という怪情報の真偽を確かめるため、現地のあおいさんとzoomを繋ぎました。回線の不調からかカメラオフだったのでお顔は見られなかったのが残念ですが、あおいさんを応援するために参加者皆でECHOESの「ZOO」を歌いました。辻仁成がこの曲の作者であり歌い手であるということ、さらには若い方はこの曲の存在自体も、知られていないということが興味深かったです。

 次に、発表者の方が各章の構造を図にして説明してくださいました。BluとRossoが人物配置や新たな人物を出し入れするタイミングも含めて対称的な構造になっていること、Rossoのミラノで雨が降っている時はBluのフィレンツェでも雨が降っていること、序盤でジョバンナが順正のヌードをデッサンする時に「卵になって」だの「生まれようとしてみて」だの言っているのは、後半の「あおいの妊娠」という主題の予告として機能していること、Bluで順正が人混みにあおいの面影を追うシーンはRossoを読むと本当にあおいがその場にいて同じ景色を見ていること、等の構成を確認することができました。

 その後は各自の感想文をもとにしたフリートークとなりました。作品として軍配を上げるとするならどっち?という問いかけでは、僅差ですがRosso江國の勝利となりました。理由は、あまりにも順正の語りがキツすぎる(笑) 『わたしを離さないで』等カズオ・イシグロの一人称小説を形容する際に「信頼できない語り手」という用語がよく使われますが、順正は「信用できない順正」なのだという新用語が爆誕しました。一方で、それを読者が読み取れるように書かれているという点でこの本は「信用できる良書」だという意見も出ました。

 他、代表的な意見をご紹介すると、

 ・男性作者が男性パート、女性作者が女性パートを書き、それが青と赤というの、今日的に見るとジェンダー的に安直すぎてこわい…

 ・2024年には、誰もこんな恋愛はできないしこんな風に語れない。みんな自分が生きることに必死。

 ・でも確かに1999年の男女ってこんな感じだった。この世代は今もどこかで未来に希望を持っている世代。

 ・詩を書き写して財布に入れて持ち歩いている順正って…

 ・Rossoに順正の名前が一回も出てこなくてあおいが一切ドゥオモに行かなければ傑作だった。

 ・公式サイトには「恋する全ての人に捧げる恋愛バイブル!」と謳われているらしいが、どこがやねん!!!

 ・芽実やマーヴがかわいそうすぎる。この人たちの方が共感できる。

    ・月数から見て「流産」とすべきところを「堕胎」と書いているのは、信用できない語り手または作者どちらかの認識が甘い。

 ・文学というより、東京の地名(梅が丘成城大学周辺)を知っていてイタリアやユーロスターにほのかな憧れを持っている東京在住・異性愛男女に向けた「商品」。実際300万部売れたし。そのわりには江國は文学性を出しすぎてしまった。

 ・フジテレビ主導の映画版はよりいっそうヤバい。同性愛要素は削除され、エンヤ(主題歌)投入。

 ・Rosso途中の感想「物語が動いてくれ、頼む!」

 ・Blu読後の感想「共作なんてすな!高校の文芸部か!」

 ・なんなのよこの人たち!

 

…等々、いつも以上に活発な意見が飛び交い、大盛り上がりの中終了しました。楽しい時間を作り上げてくださった参加者の皆様全員に感謝します。

 

 次回は、小川洋子→辻・江國→ と来たので男性作家、具体的には瀬名秀明真保裕一らのターンかな、と主催者は何となく思っていました。ですが、「平成前半の『冷静と情熱のあいだ』が歪みまくっているせいで、最近の恋愛がどう描かれているか気になってきた」という意見が多数になったので、「君の肝臓みたいな恋をした」、もとい、『君の膵臓をたべたい』を取り上げます!小川洋子辻仁成江國香織住野よる(男性)。西加奈子サラバ!』(2014)を更新し、たぶん良書読書会史上もっとも新しい(でも平成の)小説です。住野よるさんは大阪の作家なので、ご当地開催ということにもなります。これをお読みのみなさまもぜひ加わってください。一緒に語り合いましょう!

 

第32回良書読書会

日時: 8月24日(土)15:30~18:30

場所: 新大阪周辺の会議室(参加希望の方に詳細をご連絡いたします)

課題書: 住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉文庫、発表2015年)

参加費: 500円(会場代として)

 

 参加希望の方は、この読書会のアドレス、

goodbooks.preservationsoc@gmail.com

にご連絡ください。

 普段の会場がこの日しか予約できなかったため、まだ先のことなのですが日を確定させていただきます。参加したい方でどうしてもこの日は難しい、という場合もご連絡ください(その場合、昨日使用した階段が急なドゥオモに会場を変更するかもしれません(笑))。

 それでは、夏にまたお目にかかりましょう!改めましてあおいさんおめでとうございます、54年目もお元気で!  FIN  (M)